Cafè de Geneviève

気が向いたら

『愛と哀しみの果て』

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Craig Stevenson

 

バベットの晩餐会』の原作者カレン・ブリクセンことアイザック・ディネーセンが、ケニアで過ごした時代を描いた『アフリカの日々』を映画化したもの。

 

冬の日、暗い室内で書物机に向かって筆を走らす高齢の女性。自分の人生にいつまでも住み続ける愛した男性との短い日々を、問わず語りのように書き始める。

結婚するには適齢期を過ぎた自分に焦りを感じ、資金援助を条件に貴族の友人と婚約しケニアへ旅立つ。ケニアの日々はカレンにとって決して楽で愉しいものではなかった。そんなカレンの生活に、時折輝くような時間を与えたのはハンターのデニスだった。

カレンは夫の不貞に耐えられなくなる。そしてデニスと暮らす日々が訪れる。ある日デニスの飛行機に乗り、初めて遠く続くケニアの大地を見て、神の眼差しに思いを馳せる。

しかし結婚に拘るカレンにデニスは紙切れに縛られるのを拒む。出て行ってと言い放ち、また一人になったカレン。そこへ収穫したコーヒー豆の小屋からの出火で、全てを失う。デンマークに帰るためがらんどうになった部屋で食事を取っているところにデニスが来る。送って行くよと言い残し帰ってゆく。しかしデニスは再び現れることはなかった。

出発の日ファラが駅まで送る。ここでファラが言った奥様という言葉に、自分たちはもう主従関係ではない事をカレンが言う。彼はカレンには長く苦労の絶えなかったケニアでの生活を共に過ごした戦友であったのだ。そして彼女は振り返ることなく列車に乗り込んでいった。

 

外はアフリカの景色。でもひとたび家の中に入るとそこはヨーロッパ。現地人で執事的立場のファラが屋敷に仕える。当時裕福な家出身でありバロネスの身分ではあってもデンマークは弱小国。イギリス領ケニアでの居場所の難しさに早々に見切りをつける強さは全てに発揮されていった。そしてディネーセンはデンマークに戻ってから作家活動を始める。そういえば夫ブロアが狩りで留守の時に、デニスとコールがやって来たので夕食に招いた。食後暖炉のある居間で私は物語りを作るのが得意と話し、いつも姪が出だしを言うのと。では試しにとデニスが応える。そこから淀みなく物語が語られてゆく様に、デニスもコールも目を見張っていた。想像力の豊かさはすでにデンマークに居た時に磨かれていたのだ。

 

居場所を求め、ここでは無いどこかとしてアフリカの大地に向かう。世界が今よりもっともっと広い時代の話しに羨望の念を覚える。