Café de Geneviève

気が向いたら

映画『山猫』

Il gattopardo.jpg
Luchino Visconti - Il Gattopardo, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

『山猫』Il gattopardo

原作 『Il gatprdo』 Giuseppe Tomasi di Lampedusa

監督 ルキノ・ヴィスコンティ Lichino Visconti

音楽 ニーノ・ロータ Nino Rota

1963年 186分 イタリア・フランス合作

 

サリーナ公爵の一家が家の一室で朝のお祈りをしている。

それは「朝の祈り」と題をつけてもいいほどの、まるで一枚の絵画のようである。

牧師の「santa maria」という言葉に皆で「santa maria」と復誦する声が響く。

大きく開いたテラスの窓に掛かる美しく刺繍されたレースの一枚カーテンが、

外からの乾いたシチリアの風にひるがえるのが美しい。

 

舞踏会の喧騒を離れ、一人図書室の壁にかかる絵に見入るサリーナ公爵。

絵は家族に見守られ死を迎えた老人の部分が映る。

ジャン=バティスト・グルーズの「罰せられた息子」。

主題は、帰還するも家族に見守られながら亡くなった父の臨終に間に合わず、自身の愚かな行為を悔いるかのようにうつむく男が描かれている。

そしてこの絵は対画である。

対画は「恩知らずの息子(父の呪い)」という作品である。放蕩三昧の末に自身を新兵応募に身売りする、当時フランスで社会問題化していた若い男を主題としている。

 

舞踏会の帰り、広場で公爵が片膝でひざまづいた。路地奥から神父とハンドベルを振る侍者の少年が「終油の秘蹟」に向かっている。二人は広場の灯りの付いているカーテンの中へ入って行った。

そして、一人祈りを終えたサリーナ侯爵はゆっくりと路地の奥へと消えていった。

 

圧巻の舞踏会シーンには本物の貴族も参加したとある。ウフィッツィにあるブロンズィーノの「エレオノーラ・ディ・トレド」のような面差しの美しい女性がいた。

 

赤シャツ隊に参加するため別れの挨拶にやってきたタンクレーディが皆を探しに廊下に出ると、グレートデンが遊ぼうと言わんばかりに手首を引っ張る。テラスの皆んなに挨拶し終わり踵を返し行こうとする後ろ姿を嬉しそうに追いかける犬の姿が微笑ましい。

 

タンクレーディが若い将軍を連れ屋敷に帰ってきた。フレスコ画を鑑賞したいとのことだった。公爵が天井のフレスコ画の神々を説明する。一族はこの神々に讃えられているという説明だった。この後将軍はお礼に歌を披露するのだが、公爵夫人がうっかりうたた寝しかけたり、犬も大あくびをする所など面白い。この撮影を行ったヴィラ・ボスコグランデにはここの女主人に捧げられたオペラ「ベアトリーチェ・ディ・テンダ」があるそうだ。もしかしたらその一節を歌っていたのだろうか。

 

今回NHKのBSシネマで放送された分の字幕は岡本太郎氏。タンクレーディがサリーナ公爵の「夜のお出かけ」をやんわりと皮肉る台詞に色気があるなと思い、以前録画したものを確認してみるとそちらは長友紀裕氏。前回とは違う字幕のものをNHKは放送していたので録画しなかったのは残念だった。