Café de Geneviève

気が向いたら

映画『ロバと王女』

Figure de cire représentant l'actrice Catherine Deneuve dans le rôle de Peau d'Âne(château de Breteuil, France).
                                                  Château de Breteuil       wikipedia, CC BY-SA 3.0, Lien

 

ロバと王女

監督:ジャック・ドゥミ

脚本:ジャック・ドゥミ

原作:シャルル・ペロー『ロバの皮』

音楽:ミシェル・ルグラン

1970年、仏、90分

 

お姫様と王子がカトリーヌ・ドヌーヴとジャック・ペランというだけで、もうおとぎ話が完成していた。

 

NHKグレーテルのかまど』の「恋する王女のケーク・ダムール」の回で、ケーキを作るシーンが流れた。森で王子が小屋を見つけ窓を覗くとドレスを着た美しい女性がいた。王子は、小屋の女性にケーキを作るよう使いの者を出す。王女はロバの皮から金色のドレスに着替えてケーキを作る。歌を歌いながら最後に指から指輪を抜きケーキの中に忍ばせる。それを食べた王子は、ケーキから出てきたこの指輪にぴったりした指の持ち主と結婚するとおふれを出し、国中の女性の指に試すが誰もいない。最後にロバの皮を被った王女の指を試すとピッタリだったので、結婚することが出来た。

このあと映画は、結婚式にあちこちの国の王様やお妃様もやってくるのだが、そこに王女の父である王様が妖精と一緒になんとヘリコプター(!)でやって来る。

このヘリコプターでの登場はしばらく疑問だった。wikiフランスで調べても、コクトーの映画『オルフェ』の葬式に登場するオートバイと呼応しているとなっていたが...。ますますよくわからない。

 

これ実はデウス・エクス・マキナという演劇の演出方法の一つ。

古代ギリシャ研究家藤村シシンさんが『Fate/Grand Oder』というゲームの解説動画でデウス・エクス・マキナについてふれていた。そしてツイートで原義について説明している。

デウス・エクス・マキナとはラテン語で、元は古代ギリシャ語のテオス・エク・メカネス。古代ギリシャの演劇では舞台上の物語が広がりすぎて収拾がつかなくなった時に、クレーン(機械)で籠に入った神(権力)を吊るし「皆のもの、やめるのだ」の声で終わらせるというのがあるそうだ。

つまり、広げすぎた風呂敷を絶対的な存在によって一気に収束させること。ドラマの水戸黄門や吉宗(上様)あたりが近いイメージになるのだろうか...?。「機械仕掛けの神」とも訳出されている語なのだ。

 

ジャック・ドゥミの脚本によって、ヘリコプター(機械)でやってくることで王様と妖精(このあと結婚した王女に、私も王様と結婚したのと打ち明けることで、そもそも王女が王様の元から逃げ出した原因そのものが無くなった)が、デウス・エクス・マキナになったのである。

ちなみにペローの原作は「改心した王様がやってくる。」

 

古代ギリシャの演劇でも特にギリシャ悲劇に多く使われていた演出ということらしい。明治からの日本の演劇に神の代わりに菩薩様や仏様が突如現れるなどというのはなさそうなので、西洋演劇の奥の深さを時々こうして味わえるのは楽しい。