エッセイ
『The New York Times Style Magagine Japan』に
光野桃さんのエッセイが載っていた。
三年前に植えた自宅の葡萄に実がなった話だ。
久しぶりに読む文面からは、
その美しい葉陰を想うだけで涼しげな風を感じるようだった。
きっかけはなんだったか。
片端から本を買い、
まだまだ先の見えない不安定な人生の時期を、
ひととき忘れて夢中で読んだ。
今はもう、
イタリアでの近所の夫人の掃除の話と
男物のシャツの仕立ての話くらいしか思い出せないけれど、
エッセイから得た雫が
過ぎゆく日々のどこかしらを
潤してくれているのだと
思っている。