映画『お茶漬けの味』
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『お茶漬けの味』
監督:小津安二郎
音楽:斎藤一郎
1952年、日本、115分
小津監督の映画はセリフの他は無音か最低限の音のみなので、自ずとその世界観に浸りやすい。
序盤タクシーの中のシーン。まだ路面が砂利道なのだろうか、話ながら妙子と節子が激しく揺れている。
のんちゃんに誘われたパチンコ屋で、戦時中上官だった佐竹と部下だった平山の二人が再会する。朝鮮特需を機に経済上昇をしている社会ではあるが、過ぎ去った事と切り捨てるに捨てれぬ戦争の残り香は、まだそこかしこに残っているのだと感じる。
終盤、妙子ののろけばなしを聞かされた後、女友達は帰って行く。姪の節子もやっぱり帰ると言って帰ってゆく。ここでローアングルは終わる。妙子の物語は終わった。
続くラスト2・3分が興味深い。
若いのんちゃんと節子が一緒に歩いている。上から歩く二人が映し出される。
節子の話を聞きながらも一生懸命口説くのんちゃん。
ここからロングショットになり、黒い鉄柵、門扉、手前から続く歩道に植えられた大きな木の影が映る。
二人は赤坂離宮の正面の門まで来る。もう声は聞こえない。
うるさくなったのかいたずら心が湧いたのか、そこにあった見張り番所にサッと節子が入る。後を追うようにのんちゃんも入る。押し出される。のんちゃん、深くお辞儀をしてもう一度入っていった。